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Mako(メイコー)

ロボティックアーム「Mako」導入から約1年

最新技術を活用し、安心安全な手術を実現

 人工関節に特化したロボティックアーム手術支援システム「Mako(メイコー)」を当院に導入してから約1年が経過しました。この最新機器は、手術中の合併症を低減させ、骨の周辺にある靭帯といった軟部組織の損傷度を低く抑えるなど、正確で安全な手術を支援してくれます。
 当院では、この機器を用いて、これまでに50人ほどの患者様の手術を行いました。実際に使用することで改めて実感したメリットや機器の特徴について、整形外科部長の新垣宜貞医師と平良啓之医師に話を伺いました。

ロボティックアーム「Mako」
人工関節に特化したロボティックアーム手術支援システムです。2022年4月に導入し、人工膝関節置換術や人工股関節置換術の際に、ロボットによる手術支援装置を用いた手術「ロボットサージャリー」が可能になりました。1ミリ単位でCTを撮影し、精密なデータを入力して手術範囲を決めることができ、その範囲内だけで機器が動くため、より安全な手術を行えます。

ロボティックアーム手術支援システム『Mako(メイコー)』導入から約1年が経ちましたが、効果はいかがでしょうか?

新垣 導入以前はナビゲーションシステムを採用して人工関節に関連した手術を行っていました。そのシステムでは骨を切る際に、骨切りガイドを設置することから始めるのですが、骨が弱い患者様だと設置したガイドが動いてしまい、正確に骨を切ることができない場合がありました。ですが、ロボティックアームは、ダイレクトに骨を切ることができ、骨切りガイドによる不正確性がなくなりました。
平良 ロボットが制御をしてくれるので、安心安全な手術が行えています。昨年5月に1例目の手術が行われ、今年2月までに約50件の手術が実施されました。70代以上の患者様が多く、最高齢だと89歳の方もいらっしゃいます。ご高齢でも、体が元気であれば、人工関節の手術を積極的に行っていますね。

導入によって、手術の安全性もより高まったのですね。

新垣 マニュアル(手動)による手術は、医師の経験や感覚によって行われていました。そのため、骨の特に硬い部分は、どうしても力を込めなければならず、骨の後方にある靭帯などの軟部組織まで損傷する危険性があったのです。しかし、メイコーは事前に決めた範囲内だけ機器が動き、範囲から外れそうになると制御システムが作動して、それ以上は進まなくなります。そのため軟部組織を傷つける可能性もなくなり、安全性が一層高まりました。
平良 今後も経過を見続けていかないと断言できませんが、軟部組織の剥離する範囲も減り、術後の痛みなど患者様の負担が多少は減って、術後の回復が早くなったような気がします。手術時間は、マニュアル(手動)で行っていた時とあまり変わっていませんが、私たち医師や手術助手、ナースも含め、症例を重ねることで、どんどん手術時間は短くなると思います。

手術を受ける患者様に多い症例は、どのようなものですか?

平良 リウマチをはじめ、変形性の膝や腰の関節症のほか、大腿骨の骨頭が壊死された患者様もいらっしゃいます。変形性の関節症は高齢者に多い症状です。
新垣 当院では、現在60歳以上の方の手術歴しかありませんが、たとえ年齢が若くても、関節破壊がひどい方はやらざるをえません。関節破壊を引き起こす病気にリウマチがありますが、発症原因が不明で、若い方にも起こる病気です。薬物療法で進行を遅らせることが治療方法の一つですが、関節が破壊されてしまうと、その痛みを取り除くためにも、人工関節を入れる手術が必要です。

患者様にお伝えしたいことはありますか?

平良 外来では、安全な手術であることを丁寧にご説明しています。すべての患者様に手術をするわけではなく、しっかりお話をした上で、どのような治療法を選択するかを決めたいと思います。もし痛みで困っているようであれば、いつでもお越しください。
新垣 整形外科の一番の目標は、患者様の生活の質、あるいは活動性を高めていくことです。膝や股関節が痛く、日常生活で困っていらっしゃるなら、このような治療法があることをご案内したいです。高齢者には変形性の膝や股関節の関節症からくる痛みで転び、骨折してしまうこともあるので、治療や手術が骨折予防にもなります。日常生活がしっかり送れているなら、手術をする必要はありません。困っているのであれば、まずは相談にいらしてください。

インタビューに応じてくれた先生方


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【ドクターインタビュー】
整形外科部長 新垣 宜貞 医師

 4月から、南部徳洲会病院の整形外科では、人工関節に特化したロボティックアーム手術支援システム「MAKO(メイコー)」を導入しました。その最新機器の特徴やメリット、現在の整形外科の診療内容等について、整形外科部長の新垣宜貞医師に話を伺いました。

整形外科にはどのような専門医がいるのでしょうか。

 当院の整形外科は関節、手、脊椎のそれぞれの専門医がいて、関節は膝、肩、股関節などに分かれています。高齢社会になっている現代では、大腿部骨折など骨折が多くなっていますが、その原因として、骨粗しょう症が挙げられます。骨粗しょう症は自覚症状があまり感じられないため、骨折してから気づくという方が多いようです。整形外科では、骨密度の測定もしていますし、人間ドック等でもオプションで骨密度測定が盛り込まれています。それを活用するなど、日常生活から骨粗しょう症対策をすることで、骨折を減らすことができるのではないでしょうか。

このたび、新しい機器を導入したということですが、その特徴は?

 人工関節に特化したロボティックアーム手術支援システム「MAKO(メイコー)」です。当院では高齢者の変形性関節症に対する人工膝関節置換術、人工股関節置換術など、人工関節に関連する手術を行っており、それらに活用できるものです。ロボットによる手術支援装置を用いた手術「ロボットサージャリー」が当院でもできるようになりました。新しい機器の導入の前段階として2年前から、人工関節手術ではナビゲーションシステムを採用しています。まず、画像を取り込んで登録し、手術する角度や深さを指示するデータが見えるので、視覚と数値で確認しながら手術するものです。これは、今回導入する機器の一歩手前のやり方ですが、人工関節を正確に設置するために設置角度、骨を切る角度を示してくれます。それを見ながら、実際に手術を施すのは医師です。
 その先の最先端機器が、今回導入することになったメイコーです。1ミリ単位でのCTを撮影し、精密なデータを入力することによって手術の範囲が決められ、その範囲内だけで機械が動きます。範囲を外さないような制動システムがあり、安全性を高めています。つまり、正確性と安全性が高いシステムで、「医療のイノベーション」ともいえます。3年半前にメイコーの講習があり、その際、見学しました。全国の病院でもかなりの割合で導入が増加しているようです。かなり評判の良い機器なので、当院でも導入することになったわけです。

導入の決め手は?

 やはり何よりも患者さまにとってメリットが大きいということです。第一に手術中の合併症の低減です。海外文献によると、30例中マニュアルによる合併症は8~18件ですが、メイコーシステムを使った場合は0件でした。マニュアルによる手術は医師の経験や感覚によって周辺の血管や神経などを傷つけ、合併症が起こり得ます。そうすると傷の修復に時間がかかり、痛みを残す原因にもなってしまいますので、患者さまの満足度が高いとは言えません。一方、新しい機器を使用すると、手術する範囲内でしか動かないため、手術中の合併症は低減されます。これが、先ほどのようにデータとしても明らかになっているので、その点は、患者さまの大きなメリットになるといえます。
 また、手術時間も短くなり、個人差はありますが、術後の痛みも軽減され、入院期間の短縮につながるといった点も挙げられます。さらに、精度と安全性が高い手術として、患者さまに安心感を与え、満足度が高くなったというデータもあります。

新しいシステムということで患者さまへの説明は?

 これまで以上に丁寧な説明を進めながら、ロボティックアームでの手術による正確な骨切り、正確な人工関節の設置が行える点が伝わるよう心がけています。それが患者さまの安心や満足度にもつながっていくと思います。このように、患者さまが安心して手術を受けることができるというメリットの大きさを、多くの方に知っていただきたいです。

患者さまの負担が少なく、正確で安全な手術を

メリット1「正確で安全な手術を支援」
 従来の手術ナビゲーションの技術をさらに進化させ、術中の手術器械の位置を表示しながら正確な位置へ誘導します。また、コンピューター制御されたロボティックアームが治療計画外の範囲にさしかかると自動的にストップして患部周辺組織を保護。血管や神経の損傷などの合併症を防ぐことができ、正確で安全な手術を可能にします。

メリット2「手術後の“生活の質”を向上させる」
 人工股関節全置換術では術後の脱臼率の低減、人工膝関節全置換術では疼痛の低減および早期リハビリ開始などのメリットが期待できると報告されています。安全で痛みも少なく治療期間が短縮するなど、変形性股関節症や変形性膝関節などで悩む多くの患者さまの術後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させることが可能になります。


  • ロボティックアーム

  • 機器設置イメージ


  • 手術時の様子

  • モニターイメージ