沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援
泌尿器科専門研修プログラム
1.理念と使命
(1)沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムの目的。
泌尿器科専門医制度は、医の倫理に基づいた医療の実践を体得し、高度の泌尿器科専門知識と技能とともに地域医療にも対応できる総合的診療に必要な基本的臨床能力を修得した泌尿器科専門医の育成を図り、国民の健康増進、医療の向上に貢献することを目的とします。本プログラムは、基幹施設である南部徳洲会病院において高度な医療に携わり本邦の標準治療や先進的な医療・治験を経験し学ぶとともに、沖縄の特性を活かした地域医療を担う連携病院での研修を経て沖縄県および離島での医療事情を理解し、将来は泌尿器科専門医として沖縄県および離島全域を支える人材の育成を行う理念に基づいています。
加えて、母子家庭・父子家庭もしくはそれに準ずる家庭で育児をしながら後期研修をする必要があり、泌尿器科を目指したい専攻医のためのプログラムを併設しています。
(2)泌尿器科専門医の使命
泌尿器科専門医は小児から成人に至る様々な泌尿器疾患、ならびに我が国の高齢化に伴い増加が予想される排尿障害、尿路性器悪性腫瘍、慢性腎疾患などに対する専門的知識と診療技能を持ちつつ、高齢者に多い一般的な併存疾患にも独自で対応でき、必要に応じて地域医療との連携や他の専門医への紹介・転送の判断も的確に行える能力を備えた医師です。泌尿器科専門医はこれらの診療を実践し、総合的診療能力も兼ね備えることによって離島過疎地域を含む沖縄県および奄美離島の地域社会に対する責務を果たし、国民の健康・福祉の増進に貢献します。
2.専門研修の目標
専攻医は沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムによる専門研修により、「泌尿器科医は超高齢社会の高齢者ケアおよび総合的な医療ニーズに対応しつつ泌尿器科領域における幅広い知識、錬磨された技能と高い倫理性を備えた医師である」ことを理念とし、
- 泌尿器科専門知識
- 泌尿器科専門技能:診察・検査・診断・処置・手術
- 継続的な科学的探求心の涵養
- 倫理観と医療のプロフェッショナリズム
の4つのコアコンピテンシーからなる資質を備えた泌尿器科専門医になることを目指します。また、各コアコンピテンシーにおける一般目標、知識、診療技能、態度に関する到達目標が設定されています。
研修記録簿の「泌尿器科専門医のための研修目標」(20〜29頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
3.沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムの特色
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムは南部徳洲会病院を基幹施設として二次医療圏と離島僻地医療圏のバランスを考慮しつつ選択された①グループA病院(日本泌尿器科学会が定める標準的手術が年間80件以上の病院)、②グループB病院(同標準手術が年間80件未満の病院)、③グループC(離島を中心とした地域医療病院)の3種類の研修連携施設群により構成され、一般的な泌尿器科疾患の研修を中心に小児泌尿器科、女性泌尿器科、ED・性機能障害、腎移植、腹腔鏡手術(ロボット支援手術を含む)などのsubspecialty領域も効果的に研修できるように設計されています(詳細は「10. 専攻医研修ローテーション(4) 研修連携施設について」を参照してください)。専攻医はこれらの多様な病院群をローテートすることにより、泌尿器科専門医に必要な知識や技能の習得と同時に、地域医療との連携や他の専門医への紹介・転送の判断を的確に行える能力を身につけることができます。コース選択は、高い臨床実施能力の獲得とsubspecialty確立を目指し且つ、離島を中心とした地域医療を研修できる(一般コース)もしくは、研修をしながら子育てをできる環境を備えた(子育て支援コース)のどちらかを選択できる。具体的には24時間保育が可能な病院併設の保育園、子供が突然の病気になった際にも対応可能な病児保育施設。くわえて老人医療施設も併設しているので親等の介護が必要な専攻医でも泌尿器科研修が可能となっています。
4.募集専攻医数
南部徳洲会病院泌尿器科の過去3年間の泌尿器科専攻医の受け入れ総数は2名であるため。1年の受け入れ人数は原則1名としました。4年間で最高4名の専攻が研修することになります。研修連携施設における研修指導医数は5名ですので、研修指導医1名につき専攻医2名が研修可能とする基準では問題なく受け入れ可能です。またプログラム全体の手術件数は638件あまりですが専攻医1名あたり必要な手術件数は4年間で80件、1年間では20件が最低必要で4名の専攻医とすると320件の症例数となり、十分な症例数を満たしています。以上より総合的に判断し毎年原則1名を受け入れ人数とし、症例数からも十分な研修が可能です。ただし育児の必要がある選考医は優先して受け入れいたします。2017年度の募集に関しては定数を上回った場合でも柔軟に対応します。
5.専門知識・専門技能の習得計画
(1)研修段階の定義
泌尿器科専門医は2年間の初期臨床研修が終了し、後期研修が開始した段階から開始され4年間の研修で育成されます。沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムでは、基本的には(一般コース)基幹施設(南部徳洲会病院泌尿器科)で2年間(1年目および4年目)の研修を行い、それ以外の2年間を研修協力施設で研修することが原則となりますが、希望があれば基幹施設で育児を続けながら研修を継続することも可能です(育児コース)。
(2)研修期間中に習得すべき専門知識と専門技能
専門研修では、それぞれ医師に求められる基本的診療能力・態度(コアコンピテンシー)と日本泌尿器科学会が定める「研修記録簿」にもとづいて泌尿器科専門医に求められる知識・技能の修得目標を設定し、その年度の終わりに達成度を評価して、基本から応用へ、さらに専門医として独立して実践できるまで着実に実力をつけていくように配慮します。具体的な評価方法は後の項目で示します。
①専門知識
泌尿器科領域では発生学・局所解剖・生殖生理・感染症・腎生理学・内分泌学の6領域での包括的な知識を獲得します。詳細は研修記録簿の「目標1 基本知識:学ばねばならない基本的知識」(21〜22頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
②専門技能
泌尿器科領域では、鑑別診断のための各種症状・徴候の判断、診察法・検査の習熟と臨床応用、手術適応の決定や手技の習得と周術期の管理、を実践するための技能を獲得します。詳細は研修記録簿の「目標2 診療技術」「目標3 手術、処置手技」(23〜26頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
③経験すべき疾患・病態の目標
泌尿器科領域では、腎・尿路・男性生殖器ならびに関連臓器に関する、先天異常、外傷・損傷、良性・悪性腫瘍、尿路結石症、内分泌疾患、男性不妊症、性機能障害、感染症、下部尿路機能障害、女性泌尿器疾患、神経性疾患、慢性・急性腎不全、小児泌尿器疾患などの疾患について経験します。詳細は研修記録簿の「II. 経験目標」(30〜33頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
④経験すべき診察・検査
泌尿器科領域では、内視鏡検査、超音波検査、ウロダイナミックス、前立腺生検、各種画像検査などについて、実施あるいは指示し、結果を評価・判定することを経験します。詳細は研修記録簿の「目標2 診療技術」(24〜25頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
⑤経験すべき手術・処置
泌尿器科領域では、経験すべき手術件数は以下のとおりとします。
A.一般的な手術に関する項目
下記の4領域において、術者として経験すべき症例数が各領域5例以上かつ合計50例以上であること。
- 副腎、腎、後腹膜の手術
- 尿管、膀胱の手術
- 前立腺、尿道の手術
- 陰嚢内容臓器、陰茎の手術
B.専門的な手術に関する項目
下記の7領域において、術者あるいは助手として経験すべき症例数が1領域10例以上を最低2領域かつ合計30例以上であること。
- 腎移植・透析関連の手術
- 小児泌尿器関連の手術
- 女性泌尿器関連の手術
- ED、不妊関連の手術
- 結石関連の手術
- 神経泌尿器・臓器再建関連の手術
- 腹腔鏡・腹腔鏡下小切開・ロボット支援関連の手術
詳細は研修記録簿の「手術に関する研修記録」(38〜51頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
C. 全身管理
入院患者に関して術前術後の全身管理と対応を行います。詳細は研修記録簿の「目標3 手術、処置手技」(26頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
D. 処置
泌尿器科に特有な処置として以下のものを経験します。詳細は研修記録簿の「目標3 手術、処置手技」(26頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
1)膀胱タンポナーデ
- 凝血塊除去術
- 経尿道的膀胱凝固術
2)急性尿閉
- 経皮的膀胱瘻造設術
3)急性腎不全
- 急性血液浄化法
- 尿管ステント留置
- 経皮的腎瘻造設術
(3)年次毎の専門研修計画
専攻医の研修は毎年の達成目標と達成度を評価しながら進められます。以下に年次毎の研修内容・習得目標の目安を示します。
①専門研修1年目
専門研修1年目では基本的診療能力および泌尿器科的基本的知識と技能の習得を目標とします。原則として基幹施設である南部徳洲会病院での研修になります。指導医は日々の臨床を通して専攻医の知識・技能の習得を指導します。専攻医は学会・研究会への参加、e-learningなどを通して自らも専門知識・技能の習得を図ります。
1年次研修病院 | 専攻医の研修内容 | 執刀手術(年間例数) | |
---|---|---|---|
南部徳洲会病院 |
|
術者として | |
・経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT) | 10 | ||
・経尿道的前立腺切除術(TURP) | 2 | ||
・陰嚢手術(陰嚢水腫根治術、精巣固定術、去勢術) | 2 | ||
・経皮的腎瘻造設術 | 2 | ||
・経尿道的膀胱砕石術 | 2 | ||
・膀胱瘻造設術 | 2 | ||
助手として | |||
・経皮的腎結石砕石術(PNL) | 5 | ||
・経尿道的尿管結石砕石術(TUL) | 5 | ||
・開腹手術(腎、前立腺、膀胱) | 15 | ||
・腹腔鏡手術(腎、前立腺、膀胱) | 15 |
②専門研修2-3年目
専門研修の2-3年目は研修連携施設での研修となります。2年目はグループA病院(日本泌尿器科学会が定める標準的手術が80件以上の施設)、3年目はグループB病院(日本泌尿器科学会が定める標準的手術が80件未満の施設)またはグループC病院(地域医療病院)での研修を通じて大学病院では経験しづらい泌尿器科のcommon disease(血液浄化療法の実践と管理およびブラッドアクセス作成、尿路結石の治療、再発予防の指導、経尿道的手術/操作、尿路管理による尿路感染症コントロールなど)の治療・管理に習熟してもらいます。1年次に習得した知識.技能をさらに発展させ実践できるようになるとともに、各種メディカルスタッフとのスムーズな意思疎通や他科との連携も重要な研修項目となります。
2、3年次研修病院 | 専攻医の研修内容 | 執刀手術(年間例数) | |
---|---|---|---|
連携施設 |
|
術者として | |
・TURBT | 20 | ||
・TURp | 20 | ||
・副腎摘除術 | 2 | ||
・単純腎摘除術 | 2 | ||
・根治的腎摘除術 | 2 | ||
・腎部分切除術 | 2 | ||
・体外衝撃波結石砕石術 | 10 | ||
・経尿道的尿管砕石術 | 5 | ||
・尿管皮膚瘻造設術 | 2 | ||
・膀胱瘻造設術 | 2 | ||
助手として | |||
・経皮的腎砕石術 | 5 | ||
・腹腔鏡下手術(スコピスト) | 5 | ||
・前立腺全摘除術 | 5 | ||
・膀胱全摘除術 | 3 | ||
・ロボット支援手術(第2助手) | 3 |
③専門研修4年目
専門研修の4年目は基幹施設に戻っての研修となります。泌尿器科の実践的知識・技能の習得により様々な泌尿器科疾患へ対応する力量を養うことを目標とします。また将来的にサブスペシャリティーとなる分野を見通した研修も開始するようにして下さい。
4年次研修病院 | 専攻医の研修内容 | 執刀手術(年間例数) | |
---|---|---|---|
南部徳洲会病院 |
|
術者として | |
・TURBT | 10 | ||
・TURp | 3 | ||
・陰嚢手術(陰嚢水腫根治術、精巣固定術、去勢術) | 5 | ||
・TUL | 5 | ||
・腎部分切除術 | 3 | ||
・腎摘除術 | 3 | ||
・膀胱全摘除術 | 2 | ||
・経皮的腎砕石術 | 2 | ||
・前立腺全摘除術 | 2 | ||
助手として | |||
・腹腔鏡下手術(第2助手) | 5 | ||
・膀胱尿管逆流防止術 | 3 |
(4)臨床現場での学習
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムでは、実地修練(on-the-job training)に加えて、広く臨床現場での学習のサポートを目的として以下を実践します。
- 1)週間予定表を掲載
- 2)週1回定期的に泌尿器科のみならず他科・関連診療科とのカンファレンスを通して病態と診断過程を深く理解し、他領域との連携の重要性や治療計画作成の理論を学ぶ。
- 3)他施設泌尿器科との合同抄読会や勉強会を実施し、情報検索の指導を行う。
- 4)hands-on-trainingとして積極的に手術の助手/執刀医を経験する。
- 5)手術手技をトレーニングする設備や教育ビデオなどの充実を図る。
以下に1週間の主な予定と具体的な行事について示します。

- 金曜の7時30分から1時間、カンファレンスを行っています。この中で手術症例に関しては術前の評価および術式の詳細に関して検討を行います。手術後の振り返り評価は、術中ビデオを供覧し参加者全体での情報共有を行います。土曜日の8時30分からの病棟カンファレンスでは、新しく入院した患者の治療方針と退院症例の振り返り、問題点、外来への申し送り事項の確認などを全員で討論します。また臨床試験適格患者チェックもここで行われ、情報共有を行います。
- 月1回第1木曜の19時からは抄読会を開催します。当該領域のトップジャーナル(The Journal of Urology, European Urology)をテキストとし、自分の担当する範囲内から興味のある原著論文を選択し、参加者全員にわかりやすいようにプレゼンテーションを行います。
- 月に1回、放射線治療部、緩和ケア療法部との合同カンファレンスを開催し、特に放射線治療症例に関して問題点を出し合い検討を行っています。
- hands-on-trainingとして積極的に手術の執刀・助手を経験します。その際に撮影されたビデオ(開腹手術を含む)を術後にチーム全員で振り返り、術前のイメージとの違い、危険操作の有無、問題点などを抽出し、金曜日のビデオカンファレンスの資料とします。専攻医はこのプロセスを通して術中の問題点や課題を把握し、カンファレンスでのプレゼンテーションを通して、再確認をおこなうことができます。
- 現在までにビデオ撮影された開腹手術および内視鏡手術に関しては手術ビデオライブラリーとして保管しているため、いつでも参照することで同様の手術の術前シミュレーションが可能です。また腹腔鏡ドライボックス(医局に設置)やダヴィンチのシミュレーター(関連施設に設置、事前申し込み必要)はいつでも利用が可能です。
(5)臨床現場を離れた学習
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムは以下の機会を提供します。
1)国内外の標準的治療および先進的・研究的治療を学習する機会
学会参加:年1回の日本泌尿器科学会総会および西日本泌尿器科学会、日本泌尿器科学会東部総会、日本泌尿器内視鏡学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会等に適宜参加・発表の機会を持つことにより、現在行っている自分の臨床レベルや知識の評価ができ、up-to-dateな知識を吸収することができます。またできれば米国泌尿器科学会、欧州泌尿器科学会、国際泌尿器科学会、アジア泌尿器科学会等に参加することにより、国際的な視野での臨床、研究レベルを再確認でき、先進的・研究的治療を学習する絶好の機会となります。また、子育ての必要な専攻医の発表・参加は、託児が可能な日本泌尿器科学会総会学会等に優先して指導します。
2)臨床研究について:北上中央病院(サザンナイトラボラトリー:菅谷公男博士)指導のもと臨床試験および、南部徳洲会病院倫理委員会への参加、徳洲会グループ共同倫理員会への申し込みを通し、臨床治験・医学発展の基礎を学ぶともに、臨床治験の方法もつけていきます。また同研究で得られた成果は学会発表・紙上発表を行っていきます。
3)医療安全・医療倫理・感染管理等を学ぶ機会
南部徳洲会病院では医療安全・医療倫理・感染管理に関する講習会・勉強会が年7-8回開催されており、専攻医が連携施設研修時もその施設の指導医と連絡をとりつつ、これらの受講が可能となるように時間的配慮を講じます。また連携施設で独自に開催されるこれらの講習会にも専攻医が積極的に参加することを推奨し、その結果については研修委員会で確認します。
4)指導・教育法、評価法などを学ぶ機会
専攻医が指導・教育的手法を学習することは、院内臨床チーム(指導医―専攻医―初期研修医または学生)における屋根瓦式教育体制の円滑な実施のうえでも重要です。1)に挙げた日本泌尿器科学会総会および西日本泌尿器科学会に参加した際、学会が主催する指導・教育法、評価法についての教育講演を義務付け、将来的には、学会ホームページ上の教育講演内容ビデオ視聴(e-ラーニング)による代用も予定しています。
(6)自己学習
研修する施設の規模や疾患の希少性により専門研修期間内に研修カリキュラムに記載されている疾患、病態を全て経験することは出来ない可能性があります。このような場合は以下のような機会を利用して理解を深め該当疾患に関するレポートを作成し指導医の検閲を受けるようにして下さい。
- 日本泌尿器科学会および支部総会での卒後教育プラグラムへの参加
- 日本泌尿器科学会で作成されているAudio Visual Journal of JUAの閲覧(病院で購入)
- 日本泌尿器科学会ならびに関連学会で作成している各種診療ガイドライン(病院で購入)
- インターネットを通じての文献検索(医学中央雑誌やPub MedあるいはUpToDateのような電子媒体:病院で契約済)
- また専門医試験を視野に入れた自己学習
6.プログラム全体と各施設によるカンファレンス
(1)基幹施設でのカンファレンス
基幹施設におけるカンファレンスは「5. 専門知識・専門技能の習得計画(4) 臨床現場での学習」に示しましたが、項目別に概要を記します。
- 症例検討会(金曜の7時30分から):手術予定症例に関しては術前の評価および術式の詳細に関してシミュレーションを行い、手術チーム編成の妥当性を検討します。また手術施行後には手術記録および術中のビデオを供覧し参加者全体での情報共有を行うようにしています。新しく入院した患者の治療方針と退院症例の振り返り、問題点、外来への申し送り事項の確認などを全員で討論します。
- 抄読会(木曜の19時から):当該領域のトップジャーナル(The Journal of Urology, European Urology)の自分の担当する範囲内から興味のある原著論文を選択し、参加者全員にわかりやすいようにプレゼンテーションを行います。
- 他領域との合同カンファレンス(月1回):放射線治療部、緩和ケア部門と放射線治療患者を対象とした症例カンファレンスを実施しています。
連携施設でのカンファレンスに関してはそれぞれの施設により開催形態は異なります。
(2)プログラム全体でのカンファレンス
専門研修プ口グラム管理委員会に合わせて年に1回基幹施設と連携施設間の共同カンファレンスを開催します。具体的な内容は以下の通りです。
- 外部招聘講師による最新知識、医学教育や指導法に関す講習
- 問題となった症例の提示や各施設において積極的にてがけている治療の紹介
- 学会や文献検索で得られた最新の知識のレビュー等の発表
7.学問的姿勢について
専攻医は、日進月歩で進む医学・医療の進歩に対応すべく、常に自己研鑽・自己学習が求められます。沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは、日常診療で遭遇するクリニカルクエスチョンに対する問題解決能力の育成を主眼に置き、各種関連ガイドラインの自己学習や学術集会への参加を通じて学問的姿勢の基本を修得します。具体的には、診療ガイドラインや文献検索(医学中央雑誌、PubMed、UpToDate、今日の診療サポート、ClinicalKey、メディカルオンライン)を通じてEBMを実践することを学習する。またプログラム全体でのカンファレンス等にて症例のプレゼンテーションを行い、実践した治療法に対して多くの方と吟味する。さらに今日のエビデンスでは解決し得ない問題については臨床研究に自ら参加、もしくは企画する事で解決しようとする姿勢を身につけるよう努力する。学会に積極的に参加し、基礎的あるいは臨床的研究成果を発表する。得られた成果は論文として発表して、公に広めると共に批評を受ける姿勢を身につける。
本プログラムにおいては以下の要件を満たす必要があります。
- 学会での発表:日本泌尿器科学会が示す学会において筆頭演者として2回以上の発表を行います。
- 沖縄県医師会が主催する沖縄県医師会医学会に筆頭演者として年1回以上の発表を行います。
- 論文発表:査読制を敷いている医学雑誌へ筆頭著者の場合は1編以上、共著者の場合は2編以上の論文を掲載します。
- 研究参画:基幹施設と連携病院、北上中央病院(サザンナイトラボラトリー)で組織するにおける臨床研究への参画を1件以上行います。
8.コアコンピテンシーの研修計画
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは、医師として求められる基本的診療能力(コアコンピテンシー)である患者—医師関係、リスクマネージメント、チーム医療などを通じて医師としての倫理性、社会性などを修得します。内容を具体的に示します。
①患者—医師関係
医療専門家である医師と患者を含む社会との契約を十分に理解し、患者、家族から信頼される知識・技能および態度を身につけます。医師、患者、家族がともに納得できる医療を行うためのインフォームドコンセントを実施します。守秘義務を果たしプライバシーへの配慮をします。
②安全管理(リスクマネージメント)
医療安全の重要性を理解し、事故防止・事故後の対応を各施設の医療安全マニュアルに沿って実践します。院内感染対策を理解し、実施します。個人情報保護についての考え方を理解し実施します。
③チーム医療
チーム医療の必要性を理解しチームのリーダーとして活動します。指導医や専門医に適切なタイミングでコンサルテーションができます。他のメディカルスタッフと協調して診療にあたします。後輩医師に教育的配慮をします。
④社会性
保健医療や主たる医療法規を理解し、遵守します。健康保険制度を理解し保健医療をメディカルスタッフと協調し実践します。医師法・医療法、健康保険法、国民健康保険法、老人保健法を理解する。診断書、証明書を記載します。
コアコンピテンシー(医療安全、医療倫理、感染対策)に関しては日本泌尿器科学会総会、各地区総会で卒後教育プログラムとして開催されており積極的にこれらのプログラムを受講するようにする。また基幹施設である南部徳洲会病院では医療安全部や感染制御部が主催する講習会が定期的に開催されているのでこれらの講習会に関しても積極的に参加するよう心がける。
9.地域医療における施設群の役割・地域医療に関する研修計画
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムは沖縄県という地域性を活かして専攻医の指導にあたります。沖縄南部地域の都市部に加えて、沖縄県の離島地域(石垣島徳洲会病院)、加えて鹿児島県離島(奄美地域:与論徳洲会病院、沖永良部徳洲会病院)の連携施設とともに医療圏を形成して専攻医の指導に当たります(下図)。多くの地域・離島僻地医療病院を有する沖縄において、医療事情の異なる多彩な病院で指導を受けることにより、社会に対する責務を果たし、地域医療にも配慮した国民の健康・福祉の増進に貢献することの重要性を理解し、偏りのない充実した研修が可能となります。

地域中核病院から周辺の関連施設に出向き、初期対応としての疾病の診断を行い、また予防医療の観点から地域住民の健康指導を行うなど自立して責任をもって医師として行動することは、社会に対する責務を果たしつつ、国民の健康・福祉の増進に貢献することの重要性を理解する上で重要です。また地域中核病院における外来診療、夜間当直、救急疾患への対応などを通して地域医療の実状把握と求められている医療を体験することは、専門科に偏重しがちな専門医教育を是正するうえで重要です。本プログラムでは地域医療・地域連携経験について以下の研修を予定しています。
- 専門研修3年目において、泌尿器科のcommon diseaseや当直・救急当番を通して他領域の様々な疾患を体験できるグループB病院や県の僻地指定を受けた病院を中心としたグループC病院で専門医の指導を受けながら泌尿器科常勤医として勤務する。
- 大学院進学(社会人選抜)の場合、専門研修4年目において、泌尿器科専門医が不在の病院で週に1回泌尿器科専門医の指導を受けながら泌尿器科常勤医として勤務する。
また地域においての指導の質を保証するため以下の項目を実践します。 - 研修プログラムで研修する専攻医を集めての講演会やhands-on-seminarなどを開催し、教育内容の共通化を図ります。
- 専門研修指導医の訪問による専攻医指導の機会を設けます。
- 専門研修プログラム委員会に合わせて基幹施設と連携施設間の共同カンファレンスを開催し、南部徳洲会病院招聘講師による医学教育や指導法に関するFD講習をおこない、教育法や指導法の均てん化を図る。
10.専攻医研修ローテーション
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは4年間の研修期間のうち初年度と4年目の2年間を基幹施設での研修を原則としています。残りの2年間は連携施設での研修となります。基礎研究を希望する場合は、4年目にサザンナイトラボラトリーへ参加しますが、研修を同時に行うことが可能です。
(1)一般コース
通常の専攻医のためのコースで、1年目、4年目を南部徳洲会病院、2-3年目を研修連携施設で研修しますが、2年目以降の研修先に関しては本人の希望や研修の進み具合により専門研修プログラム委員会で決定します。

(2)子育て支援コース
育児子育てと仕事の両立をしながら、泌尿器科専門医取得を目指すコースです。
1~3年目を南部徳洲会病院。4年目を当院からもっとも近い(車で10分)沖縄協同病院(グループB)にて研修を予定。研修先については本人ともよく相談し研修の進み具合により専門研修プログラム委員会で決定します。

(2)研修連携施設について
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムに属する研修連携施設は5施設ありますが、すべての施設において泌尿器科指導医が常勤しています。これらの病院はI.泌尿器科専門研修プログラム整備基準の定める連携施設①(日本泌尿器科学会が定める標準手術が年間80件以上の拠点教育施設)に属するグループA病院、II.同整備基準の定める連携施設②(標準手術が年間80件未満の関連教育施設)を中心としたグループB病院、III.連携施設③(地域医療を経験するために必要な施設)で構成される地域医療に重心をおいたグループC病院の三つに大別されます(下図)。専門医研修の期間中は基本的には上記の施設での研修を基本としますが、多様な臨床症例を経験し、地域医療に貢献する目的で、連携施設のない二次医療圏(八重山、奄美離島地域の病院)にも定期的に出向し、地域医療の現状についても理解を深めて下さい。
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラム
(基幹・連携施設の概要)
沖縄中南部宮古八重山・奄美離島子育て支援泌尿器科研修プログラム参加施設
①グループA病院 | ②グループB病院 | ③グループC病院 |
日本泌尿器科学会が定める標準的手術が80件以上の病院 | 日本泌尿器科学会が定める標準的手術が80件未満の病院 | 日本泌尿器科学会指導医が在籍していない病院(僻地・離島病院) |
中部徳洲会病院 | 沖縄協同病院 | 石垣島徳洲会病院 |
豊見城中央病院 | 北上中央病院 | 与論徳洲会病院 |
病院 | 日本泌尿器科学会教育施設 | 年間手術件数(年間) | 腹腔鏡手術 | ロボット支援手術 | 体外衝撃波治療 | 透析 | 施設区 (グループ) |
南部徳洲会病院 | 拠点教育施設 | 540 | ○ | ○ | ○ | 基幹施設 | |
沖縄協同病院 | 準備中 | 85.2 | ○ | ○ | 連携施設B | ||
北上中央病院 | 24 | ○ | 連携施設B | ||||
豊見城中央病院 | 拠点教育施設 | 43.8 | ○ | ○ | ○ | 連携施設A | |
宮古島徳洲会病院 | 84 | ○ | ○ | ○ | 連携施設B | ||
中部徳洲会病院 | 拠点教育施設 | ○ | ○ | ○ | ○ | 連携施設A | |
連携協力施設 | |||||||
石垣島徳洲会病院 | ○ | グループC | |||||
与論徳洲会病院 | ○ | グループC | |||||
沖永良部徳洲会病院 | ○ | グループC |
11.専攻医の評価時期と方法
専門研修中の専攻医と指導医の相互評価は施設群による研修とともに専門研修プログラムの根幹となるものです。評価は形成的評価(専攻医に対してフィードバック評価を行い、自己の成長や達成度を把握できるように指導を行う)と総括的評価(専門研修期間全体を総括しての評価)からなります。
(1)形成的評価
指導医は年2回(3月、9月)専攻医のコアコンピテンシー項目と泌尿器科専門知識および技能修得状況に関して形成的評価を行います。すなわち、項目毎に担当指導医による専攻医に対するフィードバック評価を通じて、自己の成長や達成度を把握できるように指導を行います。研修管理委員会は年に1回開催し、研修記録簿のチェックし専門研修が順調に進んでいるかどうかを管理します。
(2)総括的評価
専門研修期間全体を総括しての最終評価は研修フプログラム管理委員会およびプログラム統括責任者が行います。基幹施設の研修プログラム管理委員会は、最終研修年度(専門研修4年目)の研修を終えた3月に研修期間中の研修目標達成度評価報告用紙と経験症例数報告用紙を総合的に評価し、専門的知識、専門的技能、医師として備えるべき態度を習得したかどうかを判定します。またコアコンピテンシー評価の一助としてメディカルスタッフによる評価も参考にして総括的評価を行います。最終的に修了可能と判断された専攻医は学会での専門医判定のための申請を行います(詳細については学会のホームページを参照にして下さい)
12.専攻医の評価時期と方法
(1)専門研修基幹施設の認定基準
泌尿器科専門研修プログラム整備基準では専門研修基幹施設の認定基準を以下のように定めています。
- 専門研修プログラムを管理し、当該プログラムに参加する専攻医および専門研修連携施設を統括する。
- 初期臨床研修の基幹型臨床研修病院の指定基準(十分な指導医数、図書館設置、CPCなどの定期開催など)を満たす教育病院としての水準が保証されている。
- 日本泌尿器科学会拠点教育施設である。
- 全身麻酔・硬膜外麻酔・腰椎麻酔で行う泌尿器科手術が年間80件以上である。
- 泌尿器科指導医が1名以上常勤医師として在籍している。
- 認定は日本泌尿器科学会が定める専門研修基幹施設の認定基準に従い、日本泌尿器科学会が行う。
- 研修内容に関する監査・調査に対応出来る体制を備えていること。
- 施設実地調査(サイトビジット)による評価に対応できる。
本プログラムの基幹施設である南部徳洲会病院は以上の要件を全てみたしています。実際の診療実績に関しては「基幹施設診療実績一覧表」を参照して下さい。
(2)専門研修連携施設の認定基準
泌尿器科専門研修プログラム整備基準では専門研修連携施設の認定基準を以下のように定めています。
- 専門性および地域性から当該専門研修プログラムで必要とされる施設であること。
- 研修連携施設は専門研修基幹施設が定めた専門研修プログラムに協力して専攻医に専門研修を提供する。
- 日本泌尿器科学会拠点教育施設あるいは関連教育施設である。
- 認定は日本泌尿器科学会が定める専門研修連携施設の認定基準に従い、日本泌尿器科学会が行う。
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムに属する研修連携施設はすべての施設において上記の認定基準をみたしています。各施設の指導医数、特色、診療実績等は別紙4、別紙7を参照して下さい。
(3)専門研修指導医の基準
泌尿器科専門研修プログラム整備基準では専門研修指導医の基準を以下のように定めています。
- 専門研修指導医とは、専門医の資格を持ち、十分な診療経験を有しかつ教育指導能力を有する医師である。
- 専攻医研修施設において常勤泌尿器科医師として5年以上泌尿器科の診療に従事していること(合計5年以上であれば転勤による施設移動があっても基準を満たすこととする)。
- 泌尿器科に関する論文業績等が基準を満たしていること。基準とは、泌尿器科に関する学術論文、学術著書等または泌尿器科学会を含む関連学術集会での発表が5件以上あり、そのうち1件は筆頭著書あるいは筆頭演者としての発表であること。
- 泌尿器科学会が認める指導医講習会を5年間に1回以上受講していること。
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムに属するグープA、B病院施設の指導医は、日本泌尿器科学会が認定する泌尿器科指導医であり、日本泌尿器科学会が認定する指導医は上記基準を満たしているので、本研修プログラムの指導医の基準も満たすものとします。
(4)専門研修施設群の構成要件
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは、専攻医の研修進捗状況を定期的に評価し、形成的評価をおこなうために本プログラム管理委員会を毎年1回(3月、9月)開催します。基幹施設、連携施設ともに、毎年3月30日までに前年度の診療実績および病院の状況に関し本プログラム管理委員会に以下の報告を行います。
- 病院の概況:病院全体での病床数、特色、施設状況(日本泌尿器科学会での施設区分、症例検討会や合同カンファレンスの有無、図書館や文献検索システムの有無、医療安全・感染対策・医療倫理に関する研修会の有無)
- 診療実績:泌尿器科指導医数、専攻医の指導実績、次年度の専攻医受けいれ可能人数)、代表的な泌尿器科疾患数、泌尿器科検査・手技の数、泌尿器科手術数(一般的な手術と専門的な手術)
- 学術活動:今年度の学会発表と論文発表
- Subspecialty領域の専門医数
(5)専門研修施設群の地理的範囲
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科研修プログラムに属する5研修連携施設、(沖縄協同病院、北上中央病院、豊見城中央病院、中部徳洲会病院、宮古島徳洲会病院)3連携協力施設(石垣島徳洲会病院、与論徳洲会病院、沖永良部徳洲会病院)があり、厚生労働省の定める沖縄、奄美保健医療圏域(第2次医療圏)を満遍なく網羅しています。
詳細は「10.専門医研修ローテーション (4) 研修連携施設について」に地図が掲載されていますので参照して下さい。
(6)専攻医受け入れ数についての基準
泌尿器科専門研修プログラム整備基準では研修指導医1名につき最大2名までの専攻医の研修を認めており、本施設群での研修指導医は5名のため指導医数から算出される専攻医受け入れ上限数は全体で年間2.5 名、診療実績から算出される専攻医受け入れ上限数は全体で5.2名が受け入れ可能です。また本プログラム基幹施設である南部徳洲会病院泌尿器科の過去3年間の専門医研修受け入れ人数は2名(H25:1, H26:0, H27:1)ですが、多様な疾患、手術を経験できる症例数を考慮すると全体で4名(1年あたりの受け入れ数:1名)を本研修プログラムの上限に設定しますが、2017年度の募集に関しては柔軟に対応します。
(7)地域医療・地域連携への対応
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て泌尿器科専門研修プログラムは、専攻医が専門医を取得するために必要な臨床修練行いつつ地域の泌尿器科医療の維持も念頭においたプログラムです。沖縄多くの離島を有し、かつ奄美群島は距離的に鹿児島より沖縄に近いこともあり同医療圏は現在沖縄が担っている部分が多く、これらの離島は高齢化が進み、常勤医の確保が困難になりつつあります。本プログラムでは、一部の都市や地域に偏ることなく二次医療圏も考慮して選択された連携施設とともに専攻医の指導に当たります。複数の地域・僻地医療病院を有する沖縄奄美離島において、医療事情の異なる多彩な病院で指導を受けることにより、社会に対する責務を果たし、地域医療にも配慮した国民の健康・福祉の増進に貢献することの重要性を理解し、偏りのない充実した研修が可能となります。本プログラムに属する連携研修施設は、すべての施設において泌尿器科指導医が常勤しています(詳細は「10. 専攻医研修ローテーション (4) 研修連携施設について」を参照してください)。専門医研修の期間4年のうち2年は基幹施設およびグループA病院をローテートすることにより臨床経験を豊富にこなし、残りの1年は泌尿器科のcommon diseaseである前立腺肥大症や尿路結石、血液透析などを豊富に経験できるグループB病院や地域医療、僻地医療に従事するグループC病院をローテートすることにより、泌尿器科専門医としてのスキルや知識だけでなく、地域医療に対するコアコンピテンシーを高め、全人的医療の涵養をめざします。詳細については「9. 地域医療における施設群の役割・地域医療に関する研修計画」の項を参照して下さい。
13.専門研修プログラム管理委員会の運営計画
専門研修基幹施設に専門研修プログラムと専攻医を統括的に管理する診療領域ごとの専門研修プ口グラム管理委員会を設置します。研修プログラム管理委員会は、研修プログラム統括責任者、研修プログラム連携施設担当者等で構成され、専攻医および研修プログラム全般の管理と、研修プログラムの継続的改良を行います。研修プログラムの改善のためには専攻医による指導医・指導体制等に対する評価が必須であり、双方向の評価システムにより互いのフィードバックから研修プログラムの改善を行います。プログラム管理委員会は、少なくとも年に1回開催します。以下にその具体的な内容を示します。
(1)研修プログラム統括責任者に関して:研修プログラム統括責任者は専攻医の研修内容と修得状況を評価し、専門研修プログラム管理委員会((3)に記載)における評価に基づいて修了の判定を行い、その資質を証明する書面を発行します。研修プログラム統括責任者の基準は下記の通りとし、本プログラム統括責任者はすべての基準を満たしています。詳細は別紙3を参照してください。
- 専門医の資格を持ち、専攻医研修施設において常勤泌尿器科医師として10年以上診療経験を有する専門研修指導医である(合計10年以上であれば転勤による施設移動があっても基準を満たすこととする)。
- 教育指導の能力を証明する学習歴として泌尿器科領域の学位を取得していること。
- 診療領域に関する一定の研究業績として査読を有する泌尿器科領域の学術論文を筆頭著者あるいは責任著者として5件以上発表していること。
- 泌尿器科指導医であることが望ましい。
(2)基幹施設の役割:南部徳洲会病院は専門研修プログラムを管理し、当該プログラムに参加する専攻医および専門研修連携施設を統括します。また各専門研修施設が研修のどの領域を担当するかをプログラムに明示するとともに研修環境を整備する責任を負います。
(3)専門研修プログラム委員会の役割:専門研修プログラム委員会は、研修プログラム統括責任者、研修プログラム連携施設担当者等で構成され、専攻医および研修プログラム全般の管理と研修プログラムの継続的改良を行います。具体的な役割は以下の通りです。
- プログラムの作成
- 専攻医の学習機会の確保
- 専攻医及び指導医から提出される評価報告書にもとづき専攻医および指導医に対して必要な助言を行う。またプログラム自身に改善の余地がある場合はこれを検討します。
- 継続的、定期的に専攻医の研修状況を把握するシステムの構築
- 適切な評価の保証
- 修了の判定
14.専門研修指導医の研修計画
指導医はよりよい専門医研修プログラムの作成のために指導医講習会などの機会を利用してフィードバック法を学習する必要があります。「指導者マニュアル」(日本泌尿器科学会作成)を適宜参照して下さい。指導医は以下の機会を利用し、トレーニングをおこなうこととします。
- 日本泌尿器科学会や地方総会で実施される教育skillや評価法などに関する指導医講習会を数年に1回講する(E-ラーニングが整備された場合、これによる受講も可能とする)。
- 南部徳洲会病院が院内で実施している教育に関するFDを受講する。
- 基幹施設と連携施設間の共同カンファレンスを開催し、沖縄南部地区泌尿器科の招聘講師による医学教育や指導法に関するFD講習をおこない、教育法や指導法の均てん化を図る。
15.専攻医の就業環境について
沖縄南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは労働環境、労働安全、勤務条件に関して以下のように定めます。
- 研修施設の責任者は専攻医のために適切な労働環境の整備に務めることとします。
- 研修施設の責任者は専攻医の心身の健康維持に配慮すること。
- 勤務時間は週に40時間を基本とし、時間外勤務は月に80時間を超えないものとします。
- 勉学のために自発的に時間外勤務を行うことは考えられることではあるが心身の健康に支障をきたさないように配慮することが必要です。
- 当直業務と夜間診療業務は区別しなければならず、それぞれに対応した適切な対価が支給されること。
- 当直あるいは夜間診療業務に対して適切なバックアップ体制を整えること。
- 過重な勤務とならないように適切な休日の保証について明示すること。
- 施設の給与体系を明示すること。
16.泌尿器科研修の中止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件
専門研修中の特別な事情への対処に関しては日本泌尿器科学会専門医制度についての申し合わせ事項(日本泌尿器科学会ウェブサイト)に準じます。
また、専門研修プログラムの移動は、移動前・後の両プログラム統括責任者の話し合いで行ってください。ただし、移動の内容に関しては日本泌尿器科学会事務局まで連絡してください。
17.専門研修プログラムの改善方法
沖縄南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムは、各指導医からの助言とともに専攻医からの双方向的なフィードバックによりプログラム自体を継続的に改善していくことを必須とします。またサイトビジット等を通じて外部評価を定期的に受け内容を反映していくことも重要です。最後に専攻医の安全を確保するため、研修施設において重大な問題が生じた場合は研修プログラム総括責任者に直接連絡を取り、場合により臨時の研修管理委員会にて対策を講じる機会を設けることとします。
18.専門研修に関するマニュアルおよび研修記録簿について
研修実績および評価の記録
研修記録簿に記載し、指導医による形成的評価を受けます。
研修プログラム管理委員会にて、専攻医の研修履歴(研修施設、期間、担当した専門研修指導医)、研修実績、研修評価を保管します。さらに専攻医による本プログラムに対する評価も保管します。
19.専攻医の募集および採用方法
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラム管理委員会は、毎年9月初旬から説明会等を行い、泌尿器科専攻医を募集します。
申請書は(1) 南部徳洲会病院のwebsite (http://www.nantoku.org)専門研修よりダウンロード、(2)電話で問い合わせ(098-998-3221)、
(3) e-mailで問い合わせhmukouyama@ace.ocn.ne.jp、のいずれの方法でも結構です。原則として2月中に書類選考および面接を行い、採否を決定して本人に文書で通知します。応募者および選考結果については3月の南部徳洲会泌尿器科専門研修プログラム管理委員会において報告します。
研修を開始した専攻医には研修を開始した年度の4月初旬に学会から、専門研修に関する案内が届きますので、内容に従って研修開始宣言を行うようにして下さい。研修開始宣言に必要な事項は以下の4項目です。
- 日本泌尿器科学会への入会(ホームページから手続き可能です)
- JUA academyへのアクセス権の取得(入会後に手続き可能です)
- 研修開始登録書
- 初期研修修了の証明(臨床研修修了証・臨床研修修了登録証)
20.専攻医の修了要件
沖縄中南部および宮古八重山、奄美離島・子育て支援泌尿器科専門研修プログラムでは以下の全てを満たすことが修了要件です。
(1) 4つのコアコンピテンシー全てに関して、専攻医による自己評価および指導医による指導医評価を行ってください。詳細は研修記録簿の「専門医研修における研修目標(20~29頁)(日本泌尿器科学会ウェブサイトに掲載)を参照して下さい。
- 泌尿器科専門知識
- 泌尿器科専門技能
- 継続的な科学的探求心の涵養
- 倫理観と医療のプロフェッショナリズム
- 一般的な手術:術者として 50例以上
- 専門的な手術:術者あるいは助手として 1領域10例以上を最低2領域かつ合計30例以上
- 経験目標:頻度の高い全ての疾患で経験症例数が各2症例以上
- 経験目標:経験すべき診察・検査等についてその経験数が各2回以上 一般的な手術:術者として 50例以上
- 専門的な手術:術者あるいは助手として 1領域10例以上を最低2領域かつ合計30例以上
- 経験目標:頻度の高い全ての疾患で経験症例数が各2症例以上
- 経験目標:経験すべき診察・検査等についてその経験数が各2回以上
- (2) 教育プログラム・学術集会への参加、業績発表による研修単位の取得:100単位
- 専門医初回申請に関してはプログラムへの参加から修了までの4年間に100単位の研修取得が必要です。またこのためには日本泌尿器科学会への入会と教育プログラム受講や研修単位管理に必要なJUA Academyに参加しておくことが必要です。
- 研修単位の詳細に関しては研修記録簿の17-19頁および日本泌尿器科学会ウェブサイトに記載されていますので参照してください。実際の申請にあたっては研修記録簿の34-37頁に単位取得に関する記録の頁がありますのでここへ記載して提出していただく必要があります。総会や地区総会、卒後教育プログラムなどの参加、受講に関しては、会場での会員カード等による単位登録を忘れないようにしてください。自動登録された研修単位に関しては日本泌尿器科学会のホームページの中の「JUA academy」で自動的に反映されますのでご活用ください。詳細につきましては日本泌尿器科学会のウェブサイトで確認してください。不明な場合は学会事務局内の専門医制度審議会(senmoni@urol.or.jp)までメールでお問い合わせください。